この記事を書いた人:光栄水産(兵庫県赤穂市・坂越湾で牡蠣を育て、加工まで行う生産者)
牡蠣の産地の話を聞いていると、「ひと潮(ひとしお)置く」「活かし込み」といった、ふだんあまり耳にしない言葉が出てくることがあります。「ひと潮ってどれくらいの期間?」「活かし込みって何をするの?」と気になった方もいるかもしれません。
結論からいうと、「ひと潮」は、潮の満ち引きの大きさがひと回りする期間のことで、光栄水産では約14日として数えています。そして「活かし込み」は、出荷の前に牡蠣をもう一度海へ戻して過ごさせる工程のこと。光栄水産では、殻付き牡蠣をひと潮(約14日)以上活かし込んでから出荷しています。
この記事では、ひと潮という言葉の意味と、坂越(さこし)湾で行っている活かし込みの流れ、その工程にこめた私たちの考えを紹介します。
- 「ひと潮」とは?潮の満ち引きと月の関係
- 「活かし込み」とは?
- 光栄水産の殻付き牡蠣が出荷されるまで
- なぜ活かし込みをするの?私たちの考え
- 冬の殻付き牡蠣のシーズン
- よくある質問
「ひと潮」とは?潮の満ち引きと月の関係
海の水は、一日のうちに満ちたり引いたりをくり返しています。この満ち引きの大きさは毎日同じではなく、月の満ち欠けに合わせて、大きくなったり小さくなったりします。
一般に、新月や満月のころは満ち引きの差が大きい「大潮(おおしお)」、半月のころは差が小さい「小潮(こしお)」と呼ばれます。大潮から小潮へ、そしてまた大潮へと移り変わるひと回りが、およそ半月。このひと回りの期間を「ひと潮」と呼びます。
| 潮の呼び名 | 月のようす(目安) | 満ち引きの差 |
|---|---|---|
| 大潮 | 新月・満月のころ | 大きい |
| 中潮 | 大潮と小潮のあいだ | 中くらい |
| 小潮 | 半月のころ | 小さい |
漁業や養殖の仕事では、潮の満ち引きが作業の段取りに大きく関わるため、「ひと潮」はよく使われる時間の単位です。光栄水産では、ひと潮を約14日として、活かし込みの期間の目安にしています。
「活かし込み」とは?
活かし込みとは、出荷する前の牡蠣を、いったん海へ戻してしばらく過ごさせる工程のことです。育てた牡蠣をそのまま出荷するのではなく、選別や殻の付着物の除去といった作業のあと、もう一度海に戻すのが特徴です。
光栄水産では、選別して付着物を落とした殻付き牡蠣を、丸い専用のカゴに入れて海へ戻し、ひと潮(約14日)以上活かし込んでいます。
「浄化」と混同されやすいのですが、浄化は水揚げしたあとに陸の水槽で行う工程で、活かし込みとは場所も目的も違います。浄化については、牡蠣の「浄化」とは?殻付き牡蠣が出荷前に通る工程と時間でくわしく紹介しています。
光栄水産の殻付き牡蠣が出荷されるまで
光栄水産は、兵庫県赤穂市の坂越湾で牡蠣を育て、水揚げから出荷までを自社で行っています。殻付き牡蠣が出荷されるまでの流れは、次のとおりです。
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 1. 選別 | コンベアの上で、形の整った牡蠣を選ぶ |
| 2. 付着物の除去 | 殻についた付着物を落とす |
| 3. 活かし込み | 丸い専用のカゴに入れて海へ戻す。期間はひと潮(約14日)以上 |
| 4. 水揚げ・洗浄 | 海から引き上げ、殻を洗う |
| 5. 浄化 | 紫外線殺菌海水で24時間以上浄化する |
| 6. 梱包・出荷 | 梱包して出荷する |
活かし込みの前の、牡蠣を育てる段階の仕事はバスケット養殖とは?牡蠣を育てる夏の海と生産者の仕事で、小さな牡蠣の赤ちゃんから育てる話は牡蠣の種苗とは?一粒の小さな牡蠣から育つまでの話を生産者が解説で紹介しています。
なぜ活かし込みをするの?私たちの考え
選別や付着物の除去の作業では、牡蠣の殻に刺激が加わります。殻に刺激を受けた牡蠣は、殻を修復しようとし、その結果、身入りがよくなる――私たちはそう考えて、活かし込みを行っています。
牡蠣は、海水を取り込んでプランクトンなどをこし取って食べる生きものです。作業を終えた牡蠣を、えさのある海にもう一度戻し、ひと潮以上の時間をかけて落ち着かせる。手間のかかる工程ですが、殻付き牡蠣をおいしい状態でお届けしたいという思いから続けています。
牡蠣が海の中でどのように暮らしているのかは、動かない貝が、美味しくなる理由。も読んでみてください。
なお、活かし込みや浄化の方法・期間は、産地や生産者によって違います。ここで紹介しているのは、光栄水産の殻付き牡蠣の場合です。
冬の殻付き牡蠣のシーズン
活かし込みを経て出荷される生の殻付き牡蠣「坂越の生かき」は、例年12月中旬〜5月中旬がシーズンです。生のむき身は例年11月中旬〜4月下旬。時期は、その年の海の状況によって前後します。販売の情報は、通販サイトのお知らせや商品ページでご案内します。
冬の生牡蠣の例年の時期や、むき身と殻付きの選び方は、冬の生牡蠣はいつから?坂越の生かき・むき身の例年の時期と楽しみ方でくわしく紹介しています。シーズンのはじまりの楽しみ方は、旬のはじまりを味わう。坂越の牡蠣、走りの季節。もどうぞ。
生で食べるときは、必ず「生食用」の表示を確認し、表示どおりに保存して期限内に召し上がってください。加熱して食べるときは、中心部が85〜90℃で90秒以上になるまで加熱するのが目安です(厚生労働省)。
よくある質問
Q. 「ひと潮」は、いつも14日ちょうどですか?
A. 潮の満ち引きのひと回りは、月の満ち欠けにもとづくため、およそ半月です。光栄水産では、活かし込みの期間の目安として「ひと潮=約14日」と数え、それ以上の期間をかけています。
Q. 冷凍むき牡蠣も活かし込みをしていますか?
A. この記事で紹介した活かし込みは、殻付き牡蠣の工程です。むき牡蠣は、水揚げしたあと一粒ずつ殻をむき、紫外線で殺菌した海水で洗浄して出荷・加工しています。
Q. 活かし込みをした牡蠣なら、生で食べられますか?
A. 生で食べられるかどうかは、「生食用」「加熱用」の表示で判断してください。加熱用と表示された牡蠣は、必ず加熱して食べてください。
まとめ
- 「ひと潮」は、潮の満ち引きの大きさがひと回りする期間。光栄水産では約14日と数えている
- 「活かし込み」は、出荷前の牡蠣をもう一度海へ戻して過ごさせる工程
- 光栄水産の殻付き牡蠣は、ひと潮(約14日)以上活かし込み、紫外線殺菌海水で24時間以上浄化してから出荷
- 殻に刺激を受けた牡蠣は殻を修復しようとし、その結果身入りがよくなると私たちは考えている
- 生の殻付き牡蠣は例年12月中旬〜5月中旬。時期は海の状況で前後する
牡蠣が食卓に届くまでには、海の暦に合わせた時間がかかっています。冬の殻付き牡蠣を食べるとき、「ひと潮」の時間を少し思い浮かべてみてください。
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出典:厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」(加熱の目安)。光栄水産の工程(活かし込み・浄化の期間)は社内資料にもとづきます。潮の呼び名と月の関係は一般的な説明です。活かし込み・浄化の方法と期間は産地や生産者によって異なります。生鮮品の時期は例年の目安で、その年の海の状況によって変わります。
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