この記事を書いた人:光栄水産(兵庫県赤穂市・坂越湾で牡蠣を育て、加工まで行う生産者)
朝晩の風が少しずつ涼しくなり、温かい煮物がおいしく感じられる季節になりました。いつもの煮物に変化をつけたいとき、試してほしいのが治部煮(じぶに)の作り方です。
治部煮は、肉に粉をまぶしてから煮る、とろみのある煮物。この作り方を牡蠣に応用すると、粉の膜が牡蠣の旨みを包み、煮汁にも自然なとろみがつく一品になります。ポイントは、粉は煮る直前に薄くまぶすことと、牡蠣は最後に入れて煮すぎないことの2つです。
この記事では、治部煮の基本と、冷凍むき牡蠣で作る「牡蠣の治部煮風」の作り方、すだれ麩や青菜の合わせ方まで紹介します。
- 治部煮とは?金沢の郷土料理
- 牡蠣で作ると、なぜおいしいのか
- 材料(2人分)
- 作り方
- とろみをきれいにつけるコツ
- すだれ麩・青菜・きのこの合わせ方
- よくある質問
治部煮とは?金沢の郷土料理
治部煮は、石川県金沢市に伝わる郷土料理です。鴨肉や鶏肉に小麦粉などの粉をまぶし、だし・しょうゆ・みりんなどで煮て、煮汁にとろみをつけます。いっしょに煮る具には、金沢の特産として知られる「すだれ麩」や、しいたけ、青菜などがよく使われ、わさびを添えていただくのが定番です。
名前の由来は、煮るときの「じぶじぶ」という音からともいわれるなど、諸説あります。おせちや、おもてなしの席にも出される、金沢の食卓になじみのある料理です。
この記事で紹介するのは、本来の鴨肉や鶏肉の代わりに牡蠣を使った「治部煮風」のアレンジです。調理の考え方は同じなので、家にある材料で気軽に作れます。
牡蠣で作ると、なぜおいしいのか
牡蠣は、加熱すると水分と一緒に旨みが外へ出やすい食材です。そこで役立つのが、治部煮の「粉をまぶしてから煮る」というひと手間。
- 粉の膜で包む:牡蠣の表面に薄い膜ができ、身がふっくらとした口当たりに仕上がる
- 旨みが煮汁にとどまる:溶け出した旨みを、とろみのついた煮汁がまとめてくれる
- 味がからむ:とろりとした煮汁が牡蠣や麩にからみ、冷めにくい
牡蠣を加熱すると縮みやすい理由と防ぎ方は、牡蠣を焼くと縮む…それ、実はちょっとした工夫で防げますでもくわしく紹介しています。
材料(2人分)
- 冷凍むき牡蠣 200g
- 小麦粉 大さじ2(片栗粉でも可)
- すだれ麩 適量(車麩・板麩・小町麩などでも可)
- 生しいたけ 4枚(しめじ・まいたけでも可)
- ほうれん草(または小松菜) 1/2束
- A だし汁 300ml
- A しょうゆ 大さじ2
- A みりん 大さじ2
- A 酒 大さじ1
- A 砂糖 小さじ1
- わさび 少々
作り方
- 牡蠣の下ごしらえ:冷凍むき牡蠣は商品の表示に従って解凍し、キッチンペーパーで水気をしっかりふく
- 具の準備:すだれ麩は水につけて戻し、軽く水気を絞って食べやすく切る。しいたけは軸を取り、飾り包丁を入れる。ほうれん草は別の鍋でゆでて水にとり、水気を絞って4cm長さに切る
- 煮汁を作る:鍋にAを合わせて中火にかけ、しいたけと麩を入れて5分ほど煮る。ここで味見をして、煮汁の味を決めておく
- 粉をまぶす:牡蠣に小麦粉を薄くまぶし、余分な粉を軽くはたく
- 牡蠣を煮る:煮汁が煮立っているところに、牡蠣を1粒ずつ離して入れる。牡蠣の中心部が85〜90℃で90秒以上になるまで加熱する(厚生労働省の目安)。煮汁にとろみがついてきたら火を止める
- 盛りつけ:器に牡蠣・麩・しいたけを盛り、ほうれん草を添えて煮汁をかける。わさびをのせて、溶きながらいただく
身がふっくらとふくらみ、中まで色が変わったら加熱できたサインです。大きな粒は半分に切って確かめましょう。
とろみをきれいにつけるコツ
粉は「煮る直前」に「薄く」
粉を早くまぶしすぎると、牡蠣の水分を吸ってべたつき、煮たときに衣がはがれやすくなります。煮汁が煮立ってからまぶし、余分な粉ははたいて薄くつけるのがきれいに仕上げるコツです。
1粒ずつ離して入れる
まとめて入れると、粉どうしがくっついてだんごになってしまいます。1粒ずつ、間をあけて入れましょう。入れたあとすぐに混ぜず、表面が固まってからやさしく返します。
小麦粉と片栗粉の違い
| 粉 | 仕上がり | こんな人に |
|---|---|---|
| 小麦粉 | ぽってりとしたとろみ。煮汁になじみ、冷めてもとろみが残りやすい | 昔ながらの治部煮らしさを出したい |
| 片栗粉 | つるんとした口当たりで、煮汁が透き通る。時間がたつととろみがゆるみやすい | 軽い食感にしたい・すぐに食べる |
片栗粉を使った牡蠣料理のコツは、片栗粉で変わる、牡蠣のおいしさでも紹介しています。
すだれ麩・青菜・きのこの合わせ方
治部煮は、牡蠣だけでなく、いっしょに煮る具が煮汁を吸っておいしくなる料理です。
- すだれ麩:表面の波形の筋に煮汁がよくからむ。手に入らなければ車麩や小町麩で。麩が煮汁を吸うので、煮汁は少し多めに残しておく
- 青菜:ほうれん草や小松菜は別ゆでして最後に添えると、色がきれいに仕上がる
- きのこ:秋らしく、しいたけ・しめじ・まいたけで。きのこから出るだしで煮汁の味が深まる
- わさび:甘辛いとろみの煮汁に、すっと香りが加わり味が引き締まる。苦手な方は、ゆずの皮や七味でも
牡蠣とだしの組み合わせが好きな方は、正月明けに食べたい、牡蠣の出汁煮もあわせてどうぞ。
よくある質問
Q. 鶏肉と牡蠣を両方入れてもいいですか?
A. 作れます。鶏肉は牡蠣より火が通るのに時間がかかるので、先に粉をまぶして煮汁に入れ、火が通ってから牡蠣を加えてください。
Q. 凍ったままの牡蠣に粉をまぶしてもいいですか?
A. 凍ったままだと、溶けた水分で粉がべたつき、衣がはがれやすくなります。商品の表示に従って解凍し、水気をふいてから粉をまぶしてください。
Q. とろみが強くなりすぎたら?
A. だし汁を少しずつ足してのばしてください。味が薄くなった場合は、しょうゆとみりんを同量ずつ加えて調えます。
Q. 作り置きできますか?
A. 作った日に食べきるのがおすすめです。時間がたつと麩が煮汁を吸い、とろみも変わります。残った場合は粗熱をとって冷蔵庫に入れ、早めに食べてください。温め直すときは中心までしっかり加熱しましょう。
まとめ
- 治部煮は、肉に粉をまぶして煮る、とろみのある金沢の郷土料理
- 牡蠣で作ると、粉の膜が旨みを包み、煮汁が自然にまとまる
- 粉は煮る直前に薄く。牡蠣は煮立った煮汁に1粒ずつ入れ、中心部85〜90℃で90秒以上加熱
- すだれ麩・青菜・きのこを合わせ、わさびを添えて
秋の煮物のバリエーションとして、牡蠣と里芋の煮物とあわせて、ぜひ食卓に取り入れてみてください。
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出典:厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」(加熱の目安)、農林水産省「うちの郷土料理」(治部煮・石川県)。本記事は治部煮の作り方を牡蠣に応用したアレンジです。分量・煮る時間は家庭での調理の目安です。解凍の方法・保存方法・期限は、冷凍むき牡蠣の商品表示に従ってください。
※画像はイメージです