この記事を書いた人:光栄水産(兵庫県赤穂市・坂越湾で牡蠣を育て、加工まで行う生産者)
「牡蠣は冬のもの」「夏の牡蠣は身がやせている」。そんな話を聞いたことはありませんか?一方で、最近は夏に食べられる真牡蠣を目にすることも増えてきました。その背景によく出てくる言葉が「三倍体(さんばいたい)」です。
結論からいうと、三倍体の牡蠣は産卵しにくいとされるため、夏でも身入りが保たれやすいと言われている牡蠣です。この記事では、牡蠣と産卵の関係、三倍体とは何か、そして坂越湾での夏の真牡蠣の話を、牡蠣を育てる生産者の立場から、できるだけやさしく紹介します。
- なぜ「夏の牡蠣は身がやせる」と言われるの?
- 三倍体の牡蠣とは
- 三倍体の牡蠣が夏も身入りを保ちやすいと言われる理由
- 坂越湾の夏の真牡蠣
- 夏に牡蠣を楽しむなら
- よくある質問
なぜ「夏の牡蠣は身がやせる」と言われるの?
一般的な真牡蠣(マガキ)は、水温が上がる夏ごろに産卵の時期を迎えるとされています。産卵の前は、身の中に卵や精子をたくわえるため、ふっくらした姿に。そして産卵を終えると、たくわえていたものを放出するため、身がやせて味わいも変わると言われています。
「名前に『R』がつかない月(May〜Augustの5〜8月)は牡蠣を食べない」という言い伝えが海外にあるのも、この時期の牡蠣の状態が関係していると言われています。日本で「牡蠣は冬」というイメージが強いのも、冬から春にかけてが真牡蠣の身入りがよい季節だからです。
三倍体の牡蠣とは
生き物の細胞には、親から受け継いだ「染色体」というものが入っています。多くの生き物は、父親と母親からひと組ずつ、合わせて2組の染色体を持っています。これを「二倍体」と呼びます。
これに対して、3組の染色体を持つものを「三倍体」と呼びます。三倍体の牡蠣は、種苗(養殖のもとになる稚貝)をつくる段階で人の手を加えて生み出されるもので、遺伝子組換えとは異なる方法でつくられるとされています。
| 二倍体(一般的な牡蠣) | 三倍体の牡蠣 | |
|---|---|---|
| 染色体 | 2組 | 3組 |
| 産卵 | 夏ごろに産卵するとされる | 産卵しにくいとされる |
| 夏の身入り | 産卵後はやせやすいと言われる | 保たれやすいとされる |
※一般的な説明です。牡蠣の状態は、海域・水温・餌の量・育て方などによっても変わります。
三倍体の詳しい仕組みについては、水産の公的な研究機関なども解説を出していますので、興味のある方は調べてみてください。
三倍体の牡蠣が夏も身入りを保ちやすいと言われる理由
三倍体の牡蠣は、染色体が3組あることで、卵や精子がつくられにくいとされています。そのため、産卵に使うはずのエネルギーが身の成長に回りやすく、夏になっても身入りが保たれやすいと言われています。
ただし、三倍体なら必ずいつでも大きく育つ、というわけではありません。牡蠣は海の中のプランクトンを食べて育つため、水温や餌の量など、その年の海の状態に大きく左右されます。三倍体は「夏にも牡蠣を楽しめる可能性を広げる工夫のひとつ」と考えるのがよさそうです。
私たち生産者も、毎日の水温や潮の様子を見ながら、牡蠣の育ち具合を確かめています。同じ湾の中でも、場所や年によって育ち方が違うのが、牡蠣養殖のむずかしさであり、おもしろさでもあります。
坂越湾の夏の真牡蠣
光栄水産は、兵庫県赤穂市の坂越(さこし)湾で牡蠣を育てています。冬の真牡蠣は、いかだから縦に吊るして育てる垂下式で育てています。
一方、専用のバスケットに入れて、波に揺られながら育てるバスケット式では、三倍体の種苗を使っています。夏の真牡蠣「赤穂クリスタルブラン」は、三倍体のマガキです。
夏の真牡蠣は、海の状態によって育ち方が変わるため、年によって出荷状況が変わります。
夏に牡蠣を楽しむなら
夏に手軽に牡蠣を楽しみたいときは、冷凍むき牡蠣200g(生食用)がおすすめです。冷凍のむき牡蠣は2月〜5月にまとめて製造し、一年を通してお届けしています。使う分だけ取り出して解凍できるので、暑い時期でも気軽に牡蠣料理が作れます。
- 牡蠣の酒蒸し:冷やしてポン酢と薬味で、さっぱりと
- 牡蠣のバター焼き:夏野菜と一緒に焼いて、しょうゆをひとたらし
- 牡蠣の炊き込みごはん:冷めてもおいしく、おにぎりにも
加熱して食べるときは、中心部が85〜90℃で90秒以上を目安に、しっかり火を通してください(厚生労働省)。
よくある質問
Q. 三倍体の牡蠣と普通の牡蠣は、味が違いますか?
A. 牡蠣の味わいは、海域や季節、育て方によっても変わるため、三倍体かどうかだけで一概には言えません。季節ごとの違いを食べ比べてみるのも楽しみ方のひとつです。
Q. 三倍体の牡蠣は珍しいものですか?
A. 三倍体は、牡蠣の種苗をつくる方法のひとつとして、国内の各地の養殖でも使われているとされています。
Q. 冷凍のむき牡蠣は、どうやって解凍すればいいですか?
A. 解凍の方法は商品の表示に従ってください。使う分だけ取り出し、解凍したらすぐに調理して食べきりましょう。一度解凍したものを再び凍らせると、食感や風味が落ちやすくなるので避けてください。
Q. 「Rのつかない月は牡蠣を食べない」は本当ですか?
A. 一般的な真牡蠣の産卵期にちなんだ言い伝えと言われています。今は冷凍の技術もあり、春に作った冷凍の牡蠣を夏に楽しむこともできます。
まとめ
- 一般的な真牡蠣は夏ごろに産卵し、産卵後は身がやせやすいと言われる
- 三倍体は染色体を3組持ち、産卵しにくいため夏も身入りが保たれやすいとされる
- 光栄水産の夏の真牡蠣「赤穂クリスタルブラン」は三倍体のマガキ。出荷状況は年によって変わる
- 夏に手軽に楽しむなら、冷凍のむき牡蠣がおすすめ
出典:光栄水産の養殖に関する社内資料、厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」(加熱の目安)。三倍体の説明は一般的な内容です。
※画像はイメージです