海から届いたお守り。瀬戸内に残る牡蠣殻の言い伝え

牡蠣の殻が、家を守ってくれるって知ってた?

― 瀬戸内に伝わる、“殻で厄を払う”暮らしの知恵 ―

潮の香りがする町で育った人なら、
庭のすみに積まれた牡蠣の殻を見たことがあるかもしれません。

「これ、なんで置いてあるの?」と聞けば、
返ってくるのは、こんなひとこと。

「牡蠣殻は、厄除けになるんよ。」


■ 瀬戸内海沿岸に根づく、静かな風習

広島、岡山、兵庫など――
瀬戸内一帯では、昔から「牡蠣殻は家を守る」と言い伝えられてきました。

節分、立春、大潮の前など、
季節の節目に家のまわりに牡蠣殻を撒く・置くことで、
魔除けや厄除けの意味があるとされていたのです。


■ なぜ“牡蠣の殻”が、厄を払う?

理由はいくつかあります:

  • 白くて硬く、尖った形が“邪気を跳ね返す”象徴

  • 潮のエネルギーを蓄えた“海の護符”のようなもの

  • 食べ終えた牡蠣=自然の恵みに感謝しながら再活用

つまり牡蠣殻は、ただの“ゴミ”ではなく、
**海と人をつなぐ「再び役目を持った存在」**だったのです。


■ 牡蠣文化がある町だからこそ生まれた風景

牡蠣の産地では、昔から殻が身近にありました。
だからこそ、それを暮らしに取り入れ、「守り」として使ってきたのは自然なことだったのかもしれません。

干した牡蠣殻が並ぶ家、
門の隅にそっと置かれた白い貝――
それは暮らしと信仰と、海の恵みの循環を感じさせる風景です。


▶ もし牡蠣を食べる機会があれば…

殻をただ捨てるのではなく、
「ちょっとだけ昔の人になったつもりで」
門のそばに置いてみるのもいいかもしれません。

潮風が吹く日に、その白さが陽にきらめいたら――
きっと海のどこかが、あなたを守ってくれている気がするはず。