兵庫の海と暮らしのなかに残る、“おいしすぎる戒め”。

あんまり食べすぎたら、口が“への字”になるで。

― 兵庫の漁師町に伝わる、ちょっと変な牡蠣の言い伝え ―

牡蠣の季節になると、
どこからともなく聞こえてくる、不思議なフレーズ。

「あんまり食べすぎたら、口がへの字になるで。」

兵庫の海辺、赤穂・室津・坂越などの漁師町で、
昔からおばあちゃんが口にしてきた“牡蠣の言い伝え”です。


■ 「口がへの字になる」ってどういう意味?

実はこれ――
**牡蠣を無我夢中で頬ばる子どもたちへの“やさしい注意”**だったと言われています。

牡蠣って、口に入れると自然と「ん〜!」って顔になりますよね。
くいしんぼうの子ほど、口が“への字”になっていく。
それを見て、「あんまり食べるとそうなるよ」と笑いながら教えていたんです。


■ 栄養たっぷりだけど、食べすぎ注意。

実際、牡蠣は栄養価が高く、
食べすぎるとお腹がゆるくなったり、胃がもたれたりすることも。

昔の人はそんな身体のサインを、
「への字になる」という“かわいい呪文”にして伝えていたのかもしれません。


■ ユーモアは、暮らしの知恵だった。

科学じゃなくてもいい。
数値じゃなくてもいい。
言葉に“くすっ”と笑える余白があるのが、言い伝えのいいところ。

食べすぎ注意を、怒らず、笑って伝える。
それもまた、海と生きる町の知恵とやさしさなのです。


▶ だから今日も、口がへの字になるまで食べてしまう。

「ダメだとわかっていても、やめられない。」
そんな魅力が、牡蠣にはある。

もしかしたら、口が“ちょっとだけ”への字になるくらいが、
ちょうどいいのかもしれませんね。